書評「プロとして恥ずかしくない 新・WEBデザインの大原則」

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webnewprinciple
こもりまさあきさん監修の書籍「プロとして恥ずかしくない 新・WEBデザインの大原則」が発売されたので、読んでみました。
「 新・WEBデザインの大原則」と銘打たれた本書は、デザインのみならず、Webにまつわる様々な領域について幅広く解説されています。レイアウト、配色、サイト設計…と目次だけにざっと目を通すと、よくあるWeb関連の入門書のようにも見えるのですが、実際に各章を読み進めると、斬新な切り口に驚かされるシーンが多々出てきます。

Webの常識を塗り替える再入門の一冊

「レイアウト」の章では、いきなりシングルカラム型レイアウトがメインで扱われているし、「Webサイト制作のワークフロー」では、一般的なワークフローの解説はそこそこに、アジャイル型のワークフローがクローズアップされています。

この辺りのトピックは、Web業界に身を置いている人なら、最近のトレンドとして日々意識はしているものの、改めて『大原則』と言われると、違和感を隠し切れない人も多いのではないでしょうか?

一部ではかなり突っ込んだ解説も交えているものの、全体としてはいい意味で「広く浅く」俯瞰できるように、絶妙なバランス感覚で構成されている本書。

これからWeb制作をはじめようという入門者にぴったりなのは間違いないのですが、私個人としては、ある程度この業界で経験を積んでいる人にこそ、オススメしたい一冊だと思いました。

経験の長い人ほど、これまでの常識やルールに囚われがちなもの。Webを取り巻く環境が目まぐるしく移り変わる昨今、自分の中のルール・原則を塗り替えるための再入門の一冊として、これほど最適なガイドブックはないかもしれません。

これからの時代のWebサイトを作るために

書籍としての特徴で見ると、大判サイズの紙面いっぱいに、図表をふんだんに詰め込みカラフルに構成された本書は、見ているだけで楽しい魅力があります。

こういった最新トピックを扱うとなると、技術的な話題に隔たりがちなケースも多いと思うのですが、「レイアウト」や「配色」に十分なボリュームを取っていることからも、本書が目指しているゴールが浮かび上がってくるのではないでしょうか?

それは、デバイスや閲覧環境が多様化する時代に、いかにユーザーに『分かりやすく伝わる』サイトを作るか?ということです。

例えばレスポンシブデザインについても、ただ流行りだからとか、ワンソースにしたいといった理由だけで採用するのではなく、本書を参考にすれば、メリットとデメリットをきちんと理解した上で導入することができるでしょう。

その意味では、本書のターゲットはデザイナーや制作者、ディレクターといった専門職の人に留まりません。自社のサイトを作りたい(または改善したい)と思う社内の担当者や、個人事業主といった人達にも、十分に役立つ一冊と言えるでしょう。

新しい世界を開くガイドブックとして

この手の入門書で、Bootstrapなどのフレームワークについて、これだけ紙数を割いた書籍は、(国内では)ちょっと他にないと思うのですが、この点も時代の移り変わりを色濃く反映していると思います。

一昔前と違って、高価なソフトやPCを揃えなくても、効率的にWeb制作を行う環境が整いつつあります。本書で紹介されているフレームワークやプロトタイピングツールなどもその一つですが、こうしたリソースに多く触れることができるのも、本書の魅力の一つではないでしょうか?

個々のツールについてさらに理解を深めるには、より専門的なリソースを探す必要がありますが、そうした新しい世界への扉を開くリファレンスとしては、大きな意義があると思います。

本書のFacebookページでは、監修のこもりさんが、書籍に掲載できなかった突っ込んだ話題を、かなりアクティブに投稿されているので、物足りない方はぜひそちらも合わせてチェックしてみてください。

また、本書の特設サイトでは、サンプルのソースコードも配布されていたりと、至れり尽くせりなので、実装が好きな人にもぜひオススメです。