「子どもを億万長者にしたければプログラミングの基礎を教えなさい」の著者・松林弘治さんの新作「プログラミングは最強のビジネススキルである」を読みました。前作は子供向けのプログラミング読本でしたが、今作のターゲットはその親を含む大人や社会人全般・・。
若者に人気のWebサービスを提供しているドワンゴ社監修だけに、ビジネスシーンへの活用事例もお墨付きですが、誰にでも親しみやすい文体で書かれているのが最大の魅力。日常的に何気なくITに接している全ての人に読んで欲しい一冊だと思いました。
社会人がプログラミングを学ぶ意義
日々のニュースでも人工知能の発達により、近い将来人間の仕事が奪われるなどといった言説が声高に叫ばれるようになってきました。本当にコンピューターが人間に取って代わる日がやって来るのでしょうか?
本書を読んで一つはっきりしたのは、そのような激動の時代を生き抜くに当たって、プログラミング技術の習得、またはプログラミングの仕組みを学習することが、間違いなく役に立つということです。
そして、日本を含む各国で目下取り組まれているプログラミング教育の枠組みでも、純粋にプログラムを書く技術だけでなく、より広い視野で時代に対応するための「プログラミング的思考」に重点が置かれていることは、覚えておいて損はないでしょう。
つまり近い将来、プログラマーやエンジニアではない普通の職種の人々にも、本書で説かれているようなプログラミング的な素養が求められてくることが、容易に想像がつくのです。
意外とシンプルなプログラムとコンピューターの仕組み
では、これからのビジネスパーソンにとって必須の教養となるプログラミングの知識は、どのように学習すればいいのでしょうか?本書では身近なシーンに溢れている『アルゴリズム』の紹介に始まり、実際にコンピューターがプログラム(=命令)をどのように処理しているか分かりやすく解説しています。
実はコンピューターの仕組み自体は、20世紀初頭に発明された当初からほとんど変わっておらず、0と1で組み合わされた情報を驚くほどのスピードで処理しているだけなのだとか・・。
これには個人的にちょっと衝撃を受けたのですが、そう言われてみれば、どのプログラミング言語の入門書を見ても、いわば基本的な演算や条件分岐の解説しか載っていないのも頷けます。
世の中には、一説では数千種類ものプログラミング言語があるそうですが、基本的な文法やルールはどの言語も大差ないのだそうです。だとすれば、一見広大に思える大規模なシステムやサービスなども、ごく単純な命令の積み重ねで作られているのでしょう。
学習の入口は身近なインターネットから
本書の第4章「実際にプログラミングを体験してみる」では、HTMLとCSS、そしてJavaScriptを題材に、実際のソースコードを交えた実践パートが掲載されています。
これらの言語は、PCやスマートフォンで皆さんがいつも見ているWebサイトを作るためのもので、本格的なプログラミング言語のイメージとは少し違う気もするのですが、どんな複雑なアプリやサービスであっても、最終的には身近なWebブラウザを通してユーザーと接することになるから、ピックアップしたそうです。
さらに言うと、PCさえあれば必ず最初から入ってるブラウザとテキストエディタだけで、コーディングから動作検証まで行えるのだから、これだけ導入しやすい開発環境は他にないのではないでしょうか?
かくいう私も、JavaScriptの勉強を兼ねて、いつも通っているライブの情報を手軽に管理するためのツールを作ってみたりしています。HTMLとJavaScriptだけでも、データを保存するメモ帳的なアプリも作れてしまうので、アイデア次第では実用的なサービスのリリースも夢ではないかもしれません。
まとめ
「子どもを億万長者にしたければプログラミングの基礎を教えなさい」を読んだ時、この本に書かれている内容は子供だけでなく、私たち大人の世代にとっても重要だと感じたのですが、本書はまさにそういった大人向けの文脈が補強された、社会人に最適なプログラミング読本だと思います。
今流行りの、子供向けプログラミング・スクールの体験会に足を運ぶ機会も多いのですが、親の側のリテラシーの違いによって、反応の違いを感じることもしばしばあります。せっかくの貴重な体験も、子供任せになってしまうと勿体ないので、ぜひプログラミングの知識がない親御さんも、本書を読んで一緒に楽しんで欲しいと思うのです。
また、プログラミングの入門書と言うと、普通は各言語の解説や文法といったパートから入ると思うのですが、本書ではどの言語を学ぶか?といった前段から書かれているのも大きな特長です。プログラミングを本格的に学ぶ前の「読み物」として、文系の人にも抵抗感なく読んでもらえることでしょう。
プログラミングへの理解を深める第一歩は、本書に書かれているように『写経』を繰り返し、サンプルコードを少しずつ自分流にアレンジしていくことだと思いますが、その次のステップとして『資格を取る』という選択肢もありかもしれません。
私はちょうど今、JavaScriptの勉強を兼ねて「HTML5プロフェッショナル認定資格」の取得を目指しています。「資格を取らなきゃ」と思うと、短期間に知識を習得しやすいので、三日坊主の方にもお薦めです。ぜひ皆さんも本書を読んで、それぞれのプログラミングの道に歩み出してもらえると幸いです。