松林弘治さんの著書「子どもを億万長者にしたければプログラミングの基礎を教えなさい」を読みました。今、世界中でプログラミング教育の機運が高まっている事例を詳しく紹介すると共に、子供にプログラミングを教えるための親としての心得をやさしく指南してくれる本書。
個人的には、今すぐ活用できるツールやスクール情報が充実しているのが嬉しかったのですが、子供と一緒に楽しく学べる工夫が散りばめられているのが大きな特徴。プログラム初心者向けに書かれているので、大人にもぜひオススメです。
目次
世界を巻き込むプログラミング教育の波
本書の冒頭では、2013年にオバマ大統領が全国民に向けて「プログラミングをしよう」と呼びかけた話を紹介し、米国のみならず、世界各国や日本国内でも、国家や民間が主導となった、プログラミング教育の推進が盛り上がりを見せている実情が解説されています。
私を含め、日頃から教育業界のトレンドに通していない人間からすると、IT教育も少しずつ普及しているのかな?ぐらいの認識だと思うのですが、このように世界規模でのビッグウェーブが来ていることを実感させられると、ウカウカしているとまずい、という気持ちになるものですね・・。
普通のビジネスパーソンにもプログラミングの素養が必���
著者の松林さんとは、instagramを通じたちょっとした知人なのですが、本業やオープンソースの分野で活躍されている傍ら、instagramの日本語化にボランティアとして関わられた立役者の一人でもあります。
instagram創業者らと交流する中で、起業家や普通のビジネスマンにとってもプログラミングの知識が必要だと実感した、という下りも本書には登場するのですが、これはかなり生々しいリアルな体験談ですよね。
実際、instagramは立ち上げから1年半足らずでFacebookへ約810億円での買収を達成し、創業者は名実ともに億万長者になったわけですから、本書のタイトルもあながち大げさとは言えないかもしれません。
お父さん・お母さんのためのプログラミング入門書
そんなプログラミング教育を主題にした本書ですが、文系の人が思わず敬遠してしまうような、小難しい技術用語や概念はほとんど出てきません。
あくまで、ノンプログラマーをターゲットとして書かれているので、普通のお父さん・お母さんが、習いごとの一環としてわが子をコンピューターに触れさせてあげたい、という程度の気持ちで手にとってもらって大丈夫です。
本格的に子供にプログラミングを教えたいと思ったら、今すぐ通えるスクールやボランティアによるワークショップなどが、本書の中でも紹介されているので、教育そのものはプロの手にまかせれば良いのでしょう。
ですが、それだけでは、子供に「なぜプログラミングを学ぶのか?」を理解させたり、継続的に親子でプラグラミングの学習を楽しむのは難しいと思います。そこで本書では、『家電製品』や『自販機』など身近なものを題材にして、親がやさしく子供に解説できるよう、プログラミングの概念や、社会の中で果たす役割を読み解いてくれているのです。
今すぐ始めるためのガイドブックとして
ここまで紹介してきたような基礎知識だけに終始せず、実際にプログラミング教育を始めたい人に役立つ実践的な情報が詰まっているのも、本書の魅力です。
民間で提供されている子供向けのプログラミング・スクールの他、全国のボランティアによって運営されているプログラミング関連のイベントやワークショップ、また子供にプログラミングの基礎を教えるのにぴったりの知育玩具やWebサービスなども多数紹介されています。
本書をレファレンス代わりに活用すれば、さして労力や費用をかけずに、子供とプログラミング学習を始めることができるでしょう。
個人的には、ブラウザ上でドラッグするだけでプログラミングが行える「Scratch」や、各地のボランティアによって運営されている「CoderDojo」、ブロックで作ったロボットに自由に命令を与えることができる「ArTec ロボティスト」などに、特に興味を惹かれました。
まとめ
「子どもを億万長者にしたければ〜」という、ちょっと煽り気味なタイトルが付けられた本書ですが、実際に読んでみると、これからの時代を生きる子供たちに向けた、愛に溢れた本だということがよく分かります。
これは著者の松林さん自身が、小学生の娘さんを育てる父親であることと無関係ではないのでしょうが、今後ますますITやコンピューターとの関わりと無縁ではいられない、未来の若者たちのために、正しくプログラミングの素養が身に付けられるように、配慮が行き届いているのです。
例え親がプログラマーじゃなくても、例え高価な教材が手に入らなくても、気軽に楽しく学べるための方法やヒントが、これでもかというほどに詰め込まれているのですから、これほど親切なプログラミング本はないのではないでしょうか?
お子さんをお持ちの方にはもちろんオススメしたい一冊ですが、それ以外にも、自分でプログラミングを勉強してみたい人や、最先端のIT教育に関心のある方には、ぜひ読んで欲しい本だと思いました。
本書で予見されているような全国民プログラマー時代を育った新人類と、近い将来あなたも一緒に仕事をすることになるかもしれないのですから・・。
関連リンク
著者の松林さん本人のブログにも本書の紹介記事が掲載されています。松林さんが本書に込められた思いや、他のたくさんの方によるレビューも紹介されているので、ぜひこちらも合わせてお読みください。