初音さんの4thアルバム「水彩とカミナリ」が10/29に発売されました。前作の「風は君の答えを待っている」から約3年ぶりとなるフルアルバムですが、デビュー10周年の締め括りを飾る集大成的な作品となりました。
「水彩とカミナリ」というタイトルが表す通り、多様な色彩を放つ個性豊かな作品が詰まっているのが特長です。ぜひ、あなただけのお気に入りの物語を探してみてください。
目次
収録曲紹介
まずはアルバム収録曲を、ひと言ずつコメント入りで紹介してみました。「水彩とカミナリ」には、インタールード(間奏曲)を除くと全11曲が収録されています。
マジックアワー
ライブが始まる瞬間の静かな興奮を描いた一曲。可愛い歌声に思わず心踊らされるが、デジタルミュージック風味のアレンジが心地良い。独特のクラップはぜひライブで楽しんで欲しい。
涙のミルクティー
甘くてほろ苦い恋の想い出を描いたラブソング。気だるくアンニュイな雰囲気と、癖になりそうなトロリとした浮遊感が特長。悲しみに浸りながら喫茶店で一人たたずむ女の子がクッキリと目に浮かぶ。
水の中で恋をした
背伸びをして大人の恋に身を投じた女の子のお話。切ないながらも優しく包み込むような歌声には、甘美な幻想世界に誘われるはず。ノスタルジックなサウンドが心地良い一曲。
ナツノアト
一夏の恋と別れをテーマにした作品。シンプルなアレンジで、切なく深みのある歌声が胸に沁み渡る。雨がモチーフになっているだけに、しっとりとした世界観と感情表現は格別。
ライフ・イズ・フィクション
どこかワールドミュージック風味を感じさせる斬新なアレンジの一曲。ドキリとする歌詞は、現代社会の矛盾を突いていて、まっすぐに生きるヒントを諭されてるような気持ちにさせられる。
scramble
他人の言葉に振り回されながら、一生懸命生きてる女の子の物語。軽快なリズムと可愛い歌声に、聴いてると思わず勇気付けられる。過去楽曲とのクロスオーバー作品として見ても面白い。
シモキタにちいさな物語
下北の街で出会った子犬と女の子のお話。まるで絵本を読み聞かせるように、ナレーション形式で歌うスタイルが意欲的。温かい歌声と深みのあるギターのセッションが心地良い。
refrain-nowadays-
自らの歌手人生を投影したかのような自伝的作品。聴くほどに深みを増すボーカルや歌詞には、心を奪われずにいられない。バイオリンやコーラスが織りなす幻想的な世界観にも注目。
PARTY NIGHT
ライブでお馴染みのアップテンポな定番曲。激しいビートと高揚感はステージさながらだが、疲れた心を解き放つ歌詞も魅力。透明感のある歌声とバンドサウンドとの調和も美しい。
月
10周年記念に書かれた集大成的な作品。過去の楽曲を彷彿させるキーワードが散りばめられているので、ファンへ向けたボーナストラックとも言える。シンプルなピアノ・アレンジに心洗われる一曲。
エンドロール
こちらも10周年の締めくくりに込めた想いを綴った一曲。夢とその続きをテーマに書かれた歌詞に思いを巡らすと感慨深い。重厚感のあるバラードとして仕上がっている流麗なアレンジも魅力的。
一本の映画を観ているように
さて、各楽曲の特長が少しは伝わったかと思うのですが、実際にアルバムを通して聴いてみて驚いたのが、曲ごとに全く違ったテイストや世界観を持っていて、すごく個性が際立った構成になっている点です。
ギュッと胸を締め付けられるようなラブソングがあったかと思えば、ワクワクと胸躍る曲や、ほっこり心温まる曲があったりと、まるで色んなジャンルの短編が詰まったオムニバス映画を観ているような気分になるのです。
「今までで一番振り幅が大きい作品になった」と初音さん本人も語っているように、音楽ジャンルの枠を超えた今回の4thアルバムは、アーティストとしての彼女にとっても、新境地と言っていい作品に仕上がっていると思います。
そんな多彩な楽曲の世界観を彩るに当たって欠かせなかったのが、10周年ワンマンでもお馴染みだった新旧の共演者を始めとする、初音さんの心強い音楽仲間たちの協力です。
満を持して発売となったフルアルバム「水彩とカミナリ」は、キャストやスタッフも豪華メンバーを総動員して作られた、一本の大作映画だと言ってもいいかもしれません。
涙が彩る大人のラブストーリー
ところで、「水彩とカミナリ」という意味深なタイトルの意味は何でしょう?私がこのアルバムを聴いて最初に感じたのは、悲しい恋の歌が多いなということです。
「涙のミルクティー」や「水の中で恋をした」、そして「ナツノアト」も別れや失恋、叶わぬ恋といったテーマを扱っていて、とにかく泣いている女の子がたくさん登場するのです。
「水彩とカミナリ」の『水彩』とは、そんな楽曲たちが持つ淡くて儚いテイストを象徴していると同時に、恋に傷ついた女の子たちの、涙で滲んだ心象風景をイメージしているのではないでしょうか?
初音さんは「恋ノート1」に代表されるように、デビュー当初からラブソングの名手としても定評がありますが、これまではどちらかというと、一途な片想いを扱った作品が多かったかと思います。
それに対して、今回の「水彩とカミナリ」に収録されているラブソングでは、ほぼ全ての主人公が失恋していたり、過去の恋愛を思い返して懐かしんでいる所も、一線を画する点と言っていいでしょう。
甘くて切ない、複雑な恋愛感情を巧みに表現できるようになったのは、初音さんがアーティストとして経験を重ねた結果だと思いますが、ぜひそんな哀しい大人の恋の歌に浸ってみてください。
本質を切り取るシャープな切り口
さて、それでは「水彩とカミナリ」の『カミナリ』とは何でしょうか?私が思うに、ふんわりした初音さんの瞳の奥に秘められた、鋭く現実を見抜く目線こそ、その正体ではないかと思うのです。
初音さんの歌詞を聴いていると、ときどきドキリとするようなキーワードが含まれていて、思わずハッとさせられることが多いのですが、今回のアルバムで言うと「ライフ・イズ・フィクション」という曲が一番分かりやすい例でしょうか・・。
この歌は、嘘や虚飾にまみれた現実社会をテーマにしながら、『そんなものは全てフィクションだ』と言い切ってしまっているのですが、どこか笑いを誘いながらも、実にエッジの効いた作風だと思いませんか?
同じく収録曲の「scramble」にも、『嘘や計算や理屈ばかりが目立ちたがる』という歌詞が登場しますが、これは往年のファンが聴けば、デビュー当時の代表曲「ホントはね」の『計算、理屈、大嫌い』という一節が、容易に思い起こされることでしょう。
曲のテイストや内容は時代と共に移り変わりながらも、どこか斜に構えて世の中の本質を見据えようとする姿勢だけは、初音さんの変わらないスタンスの一つなのかもしれません。
全ては歌を届けるために…
最後に、このアルバムはアレンジやレコーディングという形で数多くのミュージシャンが関わっていると同時に、初音さん自身が「ライブを続けて来なければこのアルバムは生まれなかった」と語っているように、ファンとの触れ合いを通して形作られて来たことも、忘れてはならないポイントです。
「マジックアワー」や「PARTY NIGHT」は、近年初音さんが力を入れているバンドライブでの掛け合いがなければ生まれなかった楽曲だし、「refrain-nowadays-」のように長らくライブ会場でのみ親しまれ、その完成度を高めていった作品も少なくありません。
何よりもライブで歌うことが好きで活動を続けていると言う初音さんですが、そんな彼女が作り上げた曲だからこそ、聴く人の心を楽しませ、感動させる魅力に溢れていることは言うまでもないでしょう。
アルバムの最後に収録されている「エンドロール」では、活動10周年を終えた初音さんの、その先へ進む決意が歌われているのですが、そんな彼女の『今』が凝縮された渾身のニューアルバムを、一人でも多くの人に手に取って欲しいと思うのです。
そして、お気に入りの曲ができたら、それをより一層楽しめるライブ会場に、ぜひ足を運んでみてください。
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初音LIVE&イベントスケジュール
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